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救出から一転、奪還された少女たち
2004年12月7日、彼らが提供した情報に基づいて、カンボジア警察の人身売買・未成年保護対策部門とプノンペン市当局が協働して、83人もの少女と女性をチャイフア・ホテルから救出しました(この約半数が18歳未満と見られています)。このホテルでは、少女たちがガラスごしに客が選べるように番号をつけられ、買春の相手をさせられていただけでなく、処女を売買していたこともわかっています(ニューヨークタイムズ紙の記者は、このホテルのことをまるで水族館のようだと書いています)。救出と同時に、その人身売買のビジネスをおこなっていたとされる容疑者7人が逮捕されました。
ところが、翌朝、容疑者全員が何の理由もなく釈放され、その数時間後にこの容疑者の一人を含む30人の男女がアフェシップの保護センター(シェルター)を襲い、救出されたばかりの少女や女性だけでなく、以前からこのシェルターに保護されていた少女・女性も合わせて91人を連れ去ってしまったのです。
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チャイフア・ホテル |
ウン・ソクンティア氏 |
政界を巻き込んだ?組織犯罪
アフェシップの創立者の一人であるピエール・レグロス氏は、バンコクで記者会見を開き、この事件が、組織犯罪を処罰することがいかに難しいかを象徴していると発言しました。マフィアなどの犯罪組織は人身売買で利益を上げようとする時点で、すでに麻薬や武器の密売によって、巨大な利益を蓄えています。そうした巨額の資金を使えば、政界の大物を買収することは簡単だからです。
そうした中、あろうことか、政府が、人身売買・未成年保護対策部門の責任者で、このホテルの摘発を部下に命じた女性幹部のウン・ソクンテアさんの職を解いたという話が伝わってきました。彼女はその勇気ある行動によって、人身売買・子ども買春に対する取り締まりを強化し、少女買春で名高いスワイパーという買春地帯の買春宿を摘発した人でした。
国際社会の反発
しかし、そうした政府の動きに対して、国際社会は黙っていませんでした。この事件および、カンボジア政府がとった行動に対して、各国政府、国連機関、NGOが続々と批判をする声明文を出したのです。まず、12月12日にEUのカンボジア駐在代表がアフェシップのシェルターへの襲撃を非難し、カンボジア政府に対して、連れ去られた少女や女性の安全の確保を求めました。次に12月21日にアメリカ大使館、世界銀行、ILO,ユニセフなど主要な国際機関と数カ国の大使館が、カンボジア政府に対し、
1)連れ去られた少女たちの安全確保
2)人身売買防止局によるホテルの犯罪捜査の継続
3)容疑者の釈放
4)シェルター襲撃
の捜査を求める声明を出しました。この声明には、JICA(日本国際協力機構)も名前を連ねていました。こうした批判の圧力からか、クンティアさんは、元の職に復帰しました。
少女たちは自分で出て行った!?
これに対し、カンボジア政府は、シェルター襲撃に関して、少女たちは無理やり連れ去られたのではない、自ら出ていったのだ、いう文書を出す一方で、問題となったホテルの違法性や容疑者が釈放された経緯については口を閉ざしたままでした。そして、12月末、カンボジア政府によって、この事件に関する調査をおこなう省庁間委員会を設置されたものの、はたしてきちんとした調査がおこなわれるかどうかについては、当初から多くの人が疑問視してきました。
特に米国政府は、この事件に関して何度もカンボジア政府を批判しています。米国政府は「人身売買の根絶のための最低基準」を満たしている度合いによって各国を評価する人身売買報告書を毎年発行しています。この事件後、米国政府は、カンボジアを人身売買状況の「分類2」から最悪の「分類3」に評価を落とす方向で検討していると発表しました。「分類3」とは、基準にまったく達しておらず、その努力を行っていない国というカテゴリーで、経済制裁の対象となりうるものです。米国政府は、カンボジア政府が人身売買業者と結託していると批判し、警察長官が逮捕された容疑者の釈放に責任があると言及しました。
しかし、カンボジア政府は、年が明けてからも、ホテルの女性たちは、アフェシップが「(自分たちを)非合法的に拘束した」と訴えていると発言したり、ホテルへの強制捜査の合法性を問題にしたりしました。
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| アフェシップの保護センター |
センターの池で遊ぶ少女 |
アフェシップはスケープゴートにはならない
これに対し、アフェシップは、「チャイフア・ホテルでは、子どもの人身売買と性的搾取が行われていたのであり、警察による最初の捜査の対象となったのがこういう問題であった。アフェシップをスケープゴートにすることは受け入れられない」というプレスリリースを発表しています。
こうした中、1月12日にはヨーロッパ議会で、このアフェシップに起きた事件が取り上げられ、決議動議がなされました。
その後、アフェシップの法律アドバイザーのアールティ・カプールさんに話を聞きました。私が、アフェシップのスタッフの安全は大丈夫かと尋ねると、このようにさまざまな国のバックアップを得たので、逆に大丈夫になったと話していました。一時はどうなるかと心配しましたが、国際レベルでこれだけ広範にわたってこの事件とアフェシップの名前が知れわたった今となっては、いくら政府の大物でも、簡単にアフェシップを妨害することはできなくなったでしょう。
必要とされる国際社会の力
残念ながら、カンボジアでは今でも政治的な理由で人が簡単に殺される事件が起きています。公務員の月給がUS20ドルというなか、数10ドル出せば簡単に殺し屋を雇うことができるということもその背景の一つといえます。
今回、つくづく感じたことは、このような状況のカンボジアで、ヨーロッパ議会が求めているような加害者処罰がきちんとなされるためには、国の外からの協力が何としても必要だということです。私たち国際市民社会がこのような事件とその後の政府の対応を監視することによって、子どもの権利を守るために活動するカンボジアのNGOの人の命を守ることができ、それが子どもの権利を守ることにつながるのだと思います。
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