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子夢子明バックナンバーから

第49号 (2004年冬号) 掲載

カンボジア・プロジェクト

支援プロジェクトの現場から

甲斐田万智子(当センター共同代表)

HCC による子どもの人身売買防止プロジェクト

 10月22日、プレイベン州コンチャイミア郡での人身売買に関する意識啓発の効果をみる調査に私も同行させてもらいました。グループごとに分かれてインタビューしたのですが、途中から私も質問をさせてもらえました。全般的にHCCが研修に入った村では多くの人が人身売買の危険性や怖さを知っていました。

 あるおばあちゃんは、「親戚がいい仕事の話をもってきても決して孫を働きに出さない。もし親戚が子どもを売るようなことをしたら、その人は処罰されるべきだ」とはっきり言っていました。

左からティーさん、チャナさん、母親のトゥオルさん

 しかし、気になるお母さんもいました。36歳になるトゥオルさんは5人の娘と一人の息子がいますが、軍隊で働いていた夫はケガをして今は家にいるとのことで生活が大変のようでした。彼女は娘さん二人を親戚の家に家事労働に出しているのですが、「村で仕事をする方が安全」と言いながら、「お金がないから娘たちをプノンペンの縫製工場に働きに出せない」と話していました。その様子からお金さえあればあっせん業者に仕事を世話してもらいたいという気持ちがあることを感じました。

 娘さんは17歳のティーさん(長女)と16 歳のチャナさん(次女)で二人とも小学校3年生で学校をやめてしまったそうです。月に30,000 リエル(7.5 ドル)の報酬しかもらえていないので、お母さんがそう考えるのも無理もないのかもしれません。雇い主の親戚の人の許可をもらって娘さんたちを呼んできてもらいました。二人とも恥ずかしがり屋さんでしたが、「職業訓練を受ける機会があれば受けたいか」と尋ねると二人とも受けたいと答えました。

 ティーさんは美容師の訓練を、チャナさんは縫製の訓練を受けたいといいます。ティーさんにこの村で開業したら商売になるのかと尋ねると、今は遠くの美容院まで行かなくてはならないから商売になるとのことでした。

アクラさんが少女たちを励ましているところ

 島野さんが書いていますが、二つ目の村を訪問したときに、父親が死に母親は出ていったにもかかわらず、学校にきちんと通って前向きに生きている少女たちに会ったことはとても印象に残りました。2年前に母親が出ていったときは、わずかに12歳と13歳だった二人ですが、しっかりとアクラさんの質問に答えていました。一つ作るのに二日かかるというカゴはきれいで、たくさん買いたかったのですが、一つしかありませんでした。その後、彼女たちの家を訪ねると16 歳のお兄ちゃんにも会うことができました。

 子どもたちのけなげな姿に胸をうたれるとともに、親がいないからといってすぐ施設に保護するのではなく、子どもたちが地域で自ら生きていく力を大切にしながら側面サポートすることの大切さを学びました。

 

アフェシップによる人身売買の被害を受けた少女たちに対する精神的ケア

 アフェシップには現在、5つのセンターがあります。一つは、ドロップインセンター。少女たちが保護されて最初に行くところです。ここで、職業訓練を受けるように勧めるのですが、中にはどうしてもすぐに家族の元に返りたいという少女たちもいます。2つ目は家族の元に戻る少女たちが迎えにくるのを待つ再統合センター。3 つ目が職業訓練センター。4 つ目がシエムリアップの保護センター。5つ目が村や家族の元に戻ることのできない16 歳未満の少女たちが長期的に滞在して村で普通の生活を送るコンポンチャム州のセンターです。

 被害にあった少女たちは、まずサイヨンさんという古くから働いている医師のスタッフから精神状態を診断されます。彼のほかに今年の5月から新しく4人のカウンセラーが入りましたが、彼らは国際子ども権利センターとほかのいくつかの団体の資金協力により配属されました。

 一人はフランス人の精神科医。残り3人は、ロイ・ディエップさん(女性)、ケング・ディニンさん(男性)、サンボさん(男性)です。いずれも精神医学を大学で学んだり、精神保健に携わったりした経験があります。ディエップさんは、国境なき医師団でHIV エイズとともに生きる人々に対して、ディニンさんとサンボさんは統合失調症の人々に対してカウンセリングをしていました。

ディエップさんとディニンさん。後ろは少女たちのぬり絵

 ドロップインセンターに保護された少女の10 人のうち5 人は将来を前向きに考えることができないそうです。それを彼女たちはカウンセリングやグループ活動によって何とか技術を身につけてから家族の元に戻るように励まします。グループカウンセリングでは、輪になって座り、将来何をしたいか、やる気がでないとどうするかなどを話し合います。怒りの感情を静めるために、床に横になって音楽を聴いたり、絵を描いたりすることもあります。

 訓練を受けている少女たちの一番の問題は集中力が続かないことと、貧しい家族からのお金を稼いでほしいというプレッシャーですが、中には、うつ病になったり自殺を考えたりする少女もいます。

 精神ケアのプログラムを見たり聞いたりして感じることは、これだけカウンセラーが増えても十分なケアができるようになるまでは、まだまだ時間がかかるということです。そして、日ごろから少女たちに接しているスタッフが精神的ケアのスキルを身につけることがいかに大切かということも感じています。

 


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