5月に始まったHCCプロジェクト「プレイベン州コムチャイミア郡における学校ベースの人身売買防止ネットワーク(SBPN)*」は、6月18日に全ての学校でネットワーク作りとトレーニングを終え、8月に入りフォローアップの段階に入りました。14校140名が想定されていましたが、実際の数は164名と盛況。そのうち6名の生徒が同郡における以前のプロジェクト「地域ベースの人身売買防止ネットワーク(CBPN)」の生徒代表メンバー(計9名)です。平行して進められる収入向上プログラムについても対象10家族中既に5家族に牛が配布されており、また家畜飼育、家庭菜園、堆肥作りのトレーニングも実施済みです。そうした中、8月9日から3泊4日のコムチャイミア出張に出発しました。 |
熱心なメンバーたち
まずSBPNフォローアップですが、今回はクラバオ・トメイ小学校他3校の小学校で実施されました。基本パターンはまずテスト、そしてネットワークの活動報告、最後にレポートの書き方となっています。テストは人身売買、子どもの権利、HIVなどについての基本的なものです。活動報告では、学校や村で行った意識啓発活動の回数や内容、そして苦労した点などについてメンバーの子どもたちが話します。そしてそれに対して解決方法や今後の方針について話し合い、それらすべてを含んだレポートの書き方がHCCスタッフから説明されます。このレポートはコミューン評議会に提出され、その月例会議にもメンバーが出席する予定となっています。そのためコミューン評議会の月例会議の前に子どもの人身売買を防ぐネットワークの月例会議が設定されます。 各ネットワークとも5・6年生で構成されていますが、こちらは入学時年齢もさまざまなこともあり、12歳から17歳の子どもまでいました。先生による選出ですが、必ずしも成績のいい生徒ばかりというわけではないものの、悪くても真ん中くらいのようではありました。また男女比についてはどの学校も女子が上回っています。 学校での活動は朝礼で、またはクラスで皆に話をするといった活動ですが、まだ自分の学年に留まっており(朝礼は全校生徒ですが)、今後他の学年にも積極的に進出して欲しいところです。村では、友達が家に来たときに、牛の世話をしながら、といった草の根における意識啓発活動が展開されたとのことでした。
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学校や村で活動を報告する子どもたち |
活動を行う上で苦労した点としては、「聞いてくれない」「信じてもらえない」という声が多く、ある学校では「半分くらいの人しか分かってくれなかった」という声が挙がると、周りの生徒たちも「うんうん」。これについては、HCCのトレーニングを受けた、というIDカードを作って欲しいという要望がありましたが、子ども達が自信を持って大人たちに話をするためにもよい方法かもしれません。またポスターやパンフレットをもっと欲しいという声も挙がり、HCCが持参したパンフレット類が配布されました。
身近にある危険 ドメスティックバイオレンスについても報告がありましたが、かなり身近なものと感じられました。直接止めることはできないものの、周囲に知らせたり、子どもを避難させたりといったできる事をしているということでした。 またクラバオ・トマイ小学校ではネットワークのリーダーが母親の従兄弟から「マレーシアで働かないか?月給100ドル以上になる」という典型的なパターンの誘いを受けたとの話がありました。父親に話したところ、「トレーニングで怖さを知ったのに行くはずがないじゃないか」と言われたとのこと。それにしても人身売買の身近さを改めて認識させられる一件でした。
子どもから子どもへ、そして親へ 最後に行ったアンチャン小学校では、先生がメンバー以外の生徒たちを集めており、一度家に帰しかけたのですが、せっかくなので残ってもらうようお願いし、最後に彼らにネットワークによる意識啓発を受けた感想を聞きました。聞いたことを家に帰って家族に話した、子どもの権利は自分にとって新しい考えだったが大切だと思った、親に話したら他の子にも教えるように励まされた、などの声が挙がっていました。 私としては彼ら彼女らから活動していく上で難しかった点についてもっと聞きたかったのですが、あまり触れられませんでした。先生に良いことを聞いて欲しい、という感情が、ごく自然なことですが、生徒たちの心のうちに働いているようにも感じました。とはいえ、今回のフォローアップで、生徒たちが総じて真面目に積極的に活動している様子を知ることができたと言ってよいと思います。
主役は子ども
続いて収入向上プログラムですが、具体的にはお金の代わりに家畜(雌)を貸し付け、子どもが産まれたら返してもらうという「家畜銀行」です。支援対象の10家庭が一堂に会し、契約書の取り交わしや家畜銀行のルールについての話し合いが行われました。牛はあくまでも生徒に対して提供されるため、まず最初に少女たちが一人一人呼ばれ、氏名年齢学年を確認、また成績や将来の夢も聞かれました。気になったのは成績で、ことごとく成績優秀者。選考基準には貧しさ、女の子どもの多さ、などがあり、最終的にはHCCと村のリーダーたちが決めるので、それらの基準を満たした、支援の必要な少女であることは確かなのですが、第一段階は学校長による推薦のため、貧しい子どもたちの中でも成績が優秀な子どもが選ばれたのかもしれません。将来の夢としては教師と農民が半々。「プノンペンの大学に通ってみたい?」との質問に何人かの子が「人身売買が怖いからいやだ」と返答。よく分かってくれているようですが、もう少し大きくなったら、怖さを理解しつつ大志も抱いて欲しいものです。肝心のローン内容の家畜ですが、原則として皆が牛を欲しがっていることを言わねばなりません。主な理由は、稲作(田起し)の労働力・めったに死ぬことがない・餌が要らない(そのへんの藁や草を食べさせていればいい)といったものです。しかし今回は予算の都合から2 家族は豚ということになっています。 牛銀行のルールは、売ってはいけない、交換してもいけない、ギャンブルに手を出さない、種付けして産まれた1 頭目の仔牛はHCCに、2 頭目はその家族に、そして最初の牝牛をHCCに返す、といったもの。死んだ場合どうするかはその時相談とのことです。豚については予算内で買えそうな優良な母豚がなかなか見つからず、その時点では未購入、小さい豚を2匹買う案も出たこともあり、豚銀行のルールは後日再検討になりました。
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新しい家族の一員と記念撮影 |
続いては貯蓄活動(メンバーは同じ)の相談。毎月11 日に月例会議を開き月1000リエル(25円程度)を貯蓄することが決定されました。月1000リエルはメンバーがプレイベン州の中でも最貧層であるということを考慮すると、高い目標かもしれませんが、彼ら自身で決めた額です。このお金は、子どもの病気等でお金が必要になったメンバーに低利で貸し出され、将来的にそうした利子の蓄積が元本を上回ったら元本は回収されます。 まだ家畜の配布も終わっておらず、貯蓄活動もこれから始まるという段階の収入向上プログラムですので、これからが本番ではありますが、子どもの名前で家畜を貸し付ける点や、貯蓄グループのリーダーなど4役が全て子どもであることなど、子どもの参加を重視した活動になっており、子どもへのエンパワーメントという意味でも、ぜひ成功して欲しいプロジェクトです。 *プレイベン州コムチャイミア郡の子どもの人身売買防止プロジェクト(8000 ドル(約88 万円)は、主に真如苑のご支援をいただいています。
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