「国連子ども特別総会」報告
@)会議における「子ども参加」の概観 国連子ども特別総会において、 最も印象的かつ学ぶべきことが多々あったのは、 「子ども参加」であったといっても過言ではない。 これほどに大規模な国際会議において、子どもたちが 自由にかつ正当に自分たちの意見を述べることができたのは 、かつてなかったことであろう。 それは12年前の「子どものための世界サミット」と比較しても、 一つの大きな前進であると言える。 「子ども参加」は言うまでもなく、子どもの権利条約第12条等において 保障されており、それがまさにこの大舞台でも展開された。 画期的だった一方、様々な「子ども参加」の段階が見られたことも事実である。 それはお飾り的なものから子ども参加の段階と呼べるものでまで様々であった。 1)情報提供の重要性−会議参加方法の説明 今回の会議に参加した子どもたちは 大きく二つのグループに分けられる。特別総会に先駆けて 行われた子どもフォーラムに参加した子どもと、そうでない子どもである。 会議における「子ども参加」のための重要なポイントとして、 第一に、子どもに的確に情報を与えることである。 いわゆる「子ども代表」ではない子どもたち ("Non-Forum Children"、子どもフォーラムに参加しない子ども) のために開かれたオリエンテーションに私たちはオブザーバーと して参加することで、具体的な参加の進め方において、 情報提供の重要性を再確認した。代表ではない子どもたちのための オリエンテーションは、一つの部屋で、子どもに関する10年間の歩みと 国連子ども特別総会、子どもの権利条約に関する歴史の説明が、 それぞれ英語、フランス語、スペイン語の通訳者を囲んで行われた。 発言者は徹底してゆっくりと話をし、重要かつ必要な情報は壁に 各言語で掲示された。 また、子どもたちへの贈り物(オリジナルバック、Tシャツなど)、
ランチが用意されており、子どもたち同士の交流が図れるよう工夫されていた。
子どもフォーラムに参加していない子どもたちは、以下のような参加方法が
あることを伝えられた。
2)子どもの声に耳を傾けること 第二に、 おとなが子どもの声に耳を傾けることが 「子ども参加」において重要であると考える。 この点に関して、進歩的な面と新たな問題点がみられた。 多くのワークショップやパネルディスカッションにおいて このことが実践されていた。いくつかのワークショップでは、 ファシリテーターも含め、発言者のほとんどが子どもであることも あった。また、安全保障理事会や総会の開会において子どもが 発言する場を与えられていたことも、注目すべき点である。 しかし、政府首脳陣が集まる中で、子どもが発言したことは、 単なる「お飾りにすぎなかった」という批判もある。 それは、子どもが提言したことが結果的に成果文書に 反映されなかったことにあらわれている。 また、パネルディスカッションなどの質問の時間には、 子どもや若者の発言を必ず優先するという配慮がしばしばみられ、 積極的に子どもの声に耳を傾ける様子が伺えた。 しかし、これらは用意された「機会」であって、 ひとりひとりのおとなの姿勢が、子どもの発言をどのような 姿勢で聞いていたかはわからない。発言の内容に関わらず、 発言者が子どもであるというだけで拍手が沸き起こることも多々あった。 このような姿勢からは、おとなたちが子どもを 「実体のある者としてその場に参加し、発言をしている者」と捉えるのではなく、 「場を盛り上げる対象」として見ていたのではないか、という疑問が残る。 3)「子ども参加」の必要性
子どもが関わっていくなかで、特におとなは彼らの声に耳を傾けなければならない。 おとなが持つ権威的言動をあらため、 子どもを一人の人間として、パートナーとしてつきあっていくことが大切である。 子どもは、従来、最も犠牲になりやすく、不利な立場に置かれており、 力のない存在だと捉えられているが、その意識変革こそ今期待されている。 子どもの参加を保障しないことは、彼らの感じ方や考えを無視することと同じである。 それはまた、一個人、一人間として存在を否定し、尊重を欠くことに値するのである。 子どもフォーラムには、世界各国から集まった子どもたちが、 総会で採択される成果文書について話し合い、 また、総会へ向けてのメッセージ"A World Fit For Us"を作成した。 この文章は、総会の始めに2人の子ども代表によって発表された。 そのメッセージの中で、子どもたちはこう述べている。 「子どもにふさわしい世界にしたい、なぜなら、子どもにふさわしい世界は、 (おとなも含めた)すべての人にふさわしい世界だから。」 子どもたちの意見や質問は、問題の核心をつくものが多かった。 子どもの虐待に関するワークショップで、ある子どもが
「子どもに対するあらゆる搾取の根絶のためには政治家や
警察官の汚職を解決しなければならない」と述べた。
また、金銭的援助の話が出たとき、「あなたたちは子どもとお金を比べるのか」
と訴える高校生もいた。「子どもはお金のことがわかってないから」
「そうはいっても…」と考えるおとなもいるかもしれない。
しかし、子どもたちのメッセージに耳を傾け、彼らが指摘する問題と正面から闘わなければ、
おとなたちがいくら議論を重ねても、問題は解決しないだろう。
あらゆる場面で子どもたちが発言したことで、
子どもたちが持つ限りない力と彼らが同じ世界に住む大切なパートナーであることに、
おとなたちは気づかされたであろう。
A)当事者の子どもたちに耳を傾けること 1)「当事者」の声
私たちが当事者としての子どもの声を聞くことの重要性を改めて強く意識したのには、二つの理由がある。一つは,子どもたちのニーズによりマッチした支援をするためには子どもたち自身の声が不可欠であるからであり、もう一つは、 当事者としての子どもたちの声が全ての始まりであるからだ。 UNGASSでは多くのパネルディスカッションにおいて子どもたち自身が 発言する場があった。その中で私たちが、 子どもたちの声を聞くことが必要と改めて思わされたパネルディスカッションがある。 それは児童労働をテーマとしたものである。 このパネルディスカッションの参加者はILOやNGO、政府官僚であったが、 おとなばかりであった。彼らは「児童労働の根絶」を声高々に謳っていた。 だが一方で、働く子どもたちが主催したパネルディスカッションでは、 子どもたちは「児童労働の根絶」を目指すのではなく、 自分たちの働く権利を主張していた。子どもたちは、 当然「搾取的な労働の根絶」を求めている。しかし彼らには、 自分が働かないと自分さえも生きていけないという現状がある。 そのため、児童労働の全廃となると、彼らは働く権利を失い、 自分自身や家族を養って行くことができなくなってしまうのである。 そのため、子どもたちは労働を「食べ物を得、教育を受け、 さらに健康生活を送るための仕事」と位置付け、また子どもの権利条約と 照らし合わせて(上記のアフリカの子どもたちは12の権利を主張している)、 働く権利を主張しているのである。 これらの対照的な主張から、
当事者の声を聞かなければ、良かれと思って行ったことでも全く
無意味なものになってしまうことが伺える。私たちはどんな問題でも
しばしば推測で話を進めてしまうことはないだろうか。
だが私たちの考えがどんなに優れた案であっても推測であるかぎり、
当事者の望むものではない場合がある。だからこそ、
まずは当事者の声を聞き、ニーズを知ることが必須である。
その際,私たちは「支援をする」のを前提とするのではなく、
ひとりの友人として彼らに接し,彼らの現状を「教えてもらう」
という立場であることを忘れてはならない。 2)子どもを第一に、Children first 私たちが子どもをサポートする者して、 常に当事者である子どものことを考えなければならない。 普段子どもたちのことを忘れているわけではない。しかし、 日々の雑務に追われて子どもたちの顔が見えにくくなっている ことはないだろうか。そんなとき、 私たちは当事者の声を聞かずに進めてしまいがちである。 だが、そこは一歩踏み止まって、まずは当事者の声を聞こう。 そこから全てが始まるのである。私たちは「南」の子どもを支援するものとして、 常に私たちが現在行っていることが子どもたちの役に立っているのか、 彼らが本当に望んでいることなのか、常に問い続けなければならない。 なぜなら私たちの活動には、子どもたちひとりひとりの命が懸かっているのだから。 私たちが常に子どもたちの声をきくことは,まさに子どもを第一に、 children firstの徹底ではないだろうか。 3)NGOだからこそ出来ること UNGASSにおいて、 NGOの目覚ましい活躍があった一方で,相変わらず国連総会では, 政治的対立や国益を挟んだ交渉が繰り広げられていた。 なかなか決着に至らなかった成果文書がその例である。 しかし、私たちはNGOとして何をすべきか。NGOだからこそ、 できることがここにあると私たちは考える。国益にとらわれず、 子どもたちの声に真に耳を傾け、一緒により良い世界を作り上げていくこと。 いかに子どもたちと一緒になれるか、いかに子どもたちのニーズを汲み取れるか, それがNGOの役目ではないだろうか。彼らの声を聞き、 彼らの気持ち、ニーズを教えてもらって初めて, 私たちは「支援」という提案が出来るのではないか。 NGO総会で印象的な一言があった。 その日のNGO総会のテーマは「子ども参加」であった。 パネリスト達は次々と「子ども参加」の重要性や子どもとの協力を訴える。 しかし、最後に司会の女性はこう言った。 「今度は私たちNGOが『子ども参加』について問われる番ですよ」と。 さて私たちは「南」の子どもを支援するものとして
常に子どもたちの声に耳を傾けているだろうか。私たちの活動は、
子どもたちの声から出発しているだろうか。
私たちの思い込みで勝手に進めてはいないだろうか。
常に子どもたちの声に立ち戻ること、それが私たちだから
こそ出来る子どもたちのための支援ではないだろうか。 |
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B)日本のNGOが成すべき行動とは−今後10年間の展望 成果文書において、国内行動計画を行うにあたり、 様々な媒体のパートナーシップが掲げられている。 その中でも、NGOが果す役割が強調され、特に政府とのつながりを 今後一層強化することが望まれている。 また、国内行動計画を立案し、 実行していくにあたって、「子どもの参加」が盛り込まれており、 子どもたちへの情報提供および政府との架け橋にNGOが果たす役割は大きいと言えよう。 さらに、国内行動計画の実施において、モニタリングが重要視されており、
その役をNGOが担えると考える。次いで、先進国は途上国にGNPの0.7%をODAの
拠出に充てることが明記されている。その点、積極的にNGOが政府に提言して
いく役割を果たすべきではないだろうか。 |